メーカーに直接、ノーダルポイントデータを訊きました!:SIGMA編

昨日のNikon編は余りにも悲しい結果に終わってしまいましたが、気を取り直して次に進みたいと思います。
本日お送りするのは、SIGMA編です。
このブログでも以前ご紹介しましたが、何たって、全てのレンズ製品のノーダルポイント/ピュピルポイントをPDFリストで非公式リリース(とは言え、このブログでの掲載許可はあっさり簡単にくれました)している会社ですから、もう本当に太っ腹でございますヨ!基本的にこの手の技術情報は、SIGMAにとっては開示情報なんですね。

そんなことなんで、以前ご紹介したリストを再度掲載したいと思います。
Nodal Point & Pupil Point Table(PDFファイル)
http://www.sigma-foto.de/cms/upload/downloads/informationen/Nodal_point_fixed.pdf

ところでこのリスト、どうやら最新のレンズには対応してないんですね。なので我らが必須レンズの最新バージョン「8mm F3.5 EX DG CIRCULAR FISHEYE」が載っていません。そこで最低限、このレンズ情報だけでも欲しいとSIGMAに尋ねましたら、速攻で返事が返ってきました。

>8mm F3.5 EX CIRCULAR FISHEYEのNODAL POINTは、
>前側主点:87.4mm
>後側主点:8.1mm
>上記数値はフィルム面からの値、レンズ先端(被写体)側に向かって符号はプラスになります。

さすが、SIGMAは太っ腹でした!(笑
そして何より、SIGMA8mmF4に比べて若干の数値の違いがありましたね。この微差が分かっただけでも、この企画は80%成功かな、と。

さぁ、次回からはマイナーレンズばかりが登場します。他のメーカーさんの返事がどうなるか、ワクワクドキドキです。乞うご期待!

■SIGMA
・8mm F3.5 EX DG CIRCULAR FISHEYE
・15mm F2.8 EX DG DIAGONAL FISHEYE
・10-20mm F4-5.6 EX DC /HSM







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コメント(10)


 こんにちは冨士です。

 パノラマ写真の撮影でよく言われる「ノーダルポイント」についてですが、そもそも魚眼レンズにノーダルポイントは存在しません。

 SIGMAは組み合わせレンズの第一主点をノーダルポイントだと勘違いして値を出しているようですが、当然これも間違いです。組み合わせレンズの主点は単なる「焦点位置」であり、「視差が生じない点」という意味でのノーダルポイントとは意味が全く異なるからです。

 普通のレンズではこの「焦点位置」と「視差が生じない点」が一致するので、第一主点の値を代用しても構いません。しかし魚眼レンズの場合、先端に「視線の方向によって焦点位置が変わるレンズ」を使って画像を歪曲しているため、視線の方向によって「視差が生じない点」が移動するのです。

 つまり、画面の中央部と周辺部ではノーダルポイントの位置が異なり、画面全体に共通するノーダルポイントは存在しないということです。画面全体に対するノーダルポイントはノーダルポイントが移動した軌跡を表す「ノーダルライン」となり、視差なしでその周囲に回転させることはできません。

---

 下記のページの測定によれば、SIGMA 8mmのノーダルポイントはフィルム面から76mm(光軸方向)〜102mm(光軸から90度の方向)の範囲で移動します。これは私の測定ともよく一致します。

http://michel.thoby.free.fr/Blur_Panorama/Nikkor10-5mm_or_Sigma8mm/Sigma_or_Nikkor/Comparison_Short_Version_Eng.html

---

 魚眼レンズのノーダルポイントについては、いろんな人がいろんな値を出していますが、視線の方向に応じて26mmも移動するわけですから違って当然です。つまり、ノーダルポイントを示す時には対応する視線の方向も示さなければならず、「視線の方向が明示されていないノーダルポイントの値は無意味」ということです。

 次に、現実問題として「どの視線方向を基準としてノーダルポイントを決定すべきか」についてですが、「視差」というのは画像のつなぎ目部分で問題になるものです。したがって、画像のつなぎ目に相当する視線方向を基準とすべきです。そして、つなぎ目がどこに来るかは「撮影方法」によって決まります。

 SIGMA 8mmレンズでよく使われる撮影法は「上下左右前後」です。この場合、つなぎ目の方向は45度〜54.7度の範囲で変化します。ですから、中間を取って視線の方向を50度とし、これに相当するノーダルポイント「フィルム面から90mm」を採用するのがベストでしょう。私は1994年以来この撮影法とノーダルポイントでパノラマを作っていますが、視差の問題を感じたことはありません。

 Nikon 10.5mmでよく使われる「上+横6枚」という撮影法では画像の形が長方形となり、つなぎ目の方向が大きく変化するので視差に関しては不利です。また、EOS5Dと組み合わせてよく使われる「横3枚」はさらに不利です。室内の撮影などには使わない方がいいでしょう。そして、これらの撮影法の場合は、つなぎ目の方向が90度になるので、それに相当するノーダルポイントを採用する必要があります。

 使っている人はほとんどいないでしょうが、SIGMA 15mmで26枚つなぐ場合についても説明しておきます。この場合つなぎ目の方向は6.8度〜16.3度の範囲で変化し、この角度に対するベストなノーダルポイントは「フィルム面から80mm」です。

 私は1995年以来この撮影法とノーダルポイントでパノラマを作っていますが、視差の問題を感じたことは一度もありません。対象物が1m以上離れていれば視差は1ピクセル以下に収まります(3000ピクセルキューブのパノラマで)。また対象物が1m以内にある場合は視差が大きくなるかも知れませんが、それ以上にピンボケするのでやはり問題にはなりません。

---

 重要なのは、「魚眼レンズに普遍的なノーダルポイントは存在せず、実用上ベストなノーダルポイントは撮影法によって変化する」ということです。撮影法が全く同じなら先人の使っている値をそのまま使っても構いませんが、撮影法が異なる場合は各自で求める必要があります。

 またそれ以前の問題として、パノラマの世界にはまともに光学を勉強している人間がほとんど存在せず、レンズやカメラのメーカーもまじめに対応していないため、「怪しい情報」が大手を振ってまかり通っています。ノーダルポイントの問題に限らず、何か問題を感じたら自分で実験するなり、光学の本を読むなりすべきです。

>>冨士さん
大変興味深く読ませていただきました。
このノーダルポイントの軌跡を知るのに、冨士さんはどのような計測方法をとられているのでしょうか。よろしければ教えてください。

>冨士さん江
ご返事が遅くなり、申し訳有りません。
まずは長文のコメント、ありがとうございました。そして、大変貴重なご教授、重ねてお礼申し上げます。
私の余りの知識不足でお話を100%理解することが出来ず、もどかしく思っている次第です。また疑問の念もフツフツと沸き起こり、経験上賛同しかねる部分もあったりします。が、それとて余りの知識不足で、どうご返事すべきかその言葉を存じ上げず、またまたもどかしさが沸き上がります。
私自身、97年からパノラマ制作に携わっておりますが、円筒パノラマに関しては厳密なノーダルポイントの測定は必要としないため、意識せずに来ております(あくまでワークフロー上の問題です)。CubicVR制作の段になって初めて必要性が生まれたものだと認識しております。
確かに日本ではパノラマ専業の方が非常に少なく、また日本語の研究文献も皆無に等しいため、各自が英語文献を頼りに手探りで制作しているのが実情だと思います。実際、私も光学技術の知識や文献は殆ど持っていないため、常に専門用語などに戸惑いを感じながら、おそるおそる文献を斜め読みする日々です。
少々専門的すぎると思い、躊躇ってはいましたが、冨士さんの回答の中でもご指摘の通り、光学系の文献を読む必然性は誰もが持っていると思いますので、近い将来、私の手元にあるパノラマ系光学技術の文献を本ブログでご紹介させていただきます。
よろしければ、冨士さんが今まで読んで役に立った文献などがございましたら、そのエントリーにてまたコメントいただけますでしょうか?心よりお待ちしております。


 まず最初に、年度の数字が間違っていました。私がこれらのレンズを使い始めたのは、1995年ではなく2005年、1994年ではなく2004年です。訂正します。
 
> 私自身、97年からパノラマ制作に携わっておりますが、円筒パノラマに関しては厳密なノーダルポイントの測定は必要としないため、意識せずに来ております(あくまでワークフロー上の問題です)。CubicVR制作の段になって初めて必要性が生まれたものだと認識しております。

 そんなことはありません。「2枚の画像をつなぐ時に視差が問題となるかならないか」は「レンズの画角(および撮影法)」、「対象物までの距離」、「パノラマの解像度」で決まります。円周魚眼を使って、室内などのパノラマを、高解像度で撮影する場合、円筒パノラマでも視差の問題は発生します。問題の深刻さはCubicVRと全く変わりません。「画像をつなぐ」という点ではどちらも同じだからです。

 単に、昔のカメラやコンピュータが非力で、低解像度の円筒パノラマしか作っていなかったからそう感じるのだと思います。

 逆に、レンズの画角が狭い場合や遠くの風景しか撮らないのであれば、高解像度のCubicVRを作る場合でもノーダルポイントを気にする必要はありません。例えば、105mmのレンズを使ってパノラマを作る場合、10m以内にある物体はぼけてしまうので必然的に遠景専用となり、ノーダルポイントを合わせる必要もなくなります。

> 少々専門的すぎると思い、躊躇ってはいましたが、冨士さんの回答の中でもご指摘の通り、光学系の文献を読む必然性は誰もが持っていると思いますので、近い将来、私の

 「光学系の文献」なんて読む必要はありません。高校の教科書で十分です(ただし昔の)。私は大学や勤め先の専門も光学なのでより深く理解できていますが、少なくともノーダルポイントを理解するのに日本の中学や高校で習った以上の知識は要りません。

---

> 大変興味深く読ませていただきました。
このノーダルポイントの軌跡を知るのに、冨士さんはどのような計測方法をとられているのでしょうか。よろしければ教えてください。

 まず、以下の解説ムービーにあるように「魚眼レンズのノーダルポイントは動く」ということは、レンズを見ただけで直感的にわかります。
http://www.11moon.com/QuickTimeVR/temp/nodal_line.mov

 次に、私が使っているノーダルポイント測定法はごく普通に以下の通りです。

1. カメラの固定位置を変更可能で水平回転可能な架台を用意し、カメラをのせて画像Aを撮影する。

2. 適切な角度(例えば50度)回転させ、画像Bを撮影する。

3. 画像Aの中心部に写っている、近くの物体(20cm程度)と遠くの物体との位置関係を画像Bのそれらと比較する。視差によるずれがある場合はカメラの固定位置を変更し、ずれが無くなるまでステップ1と2を繰り返す。

 20分ほどで終わる簡単な作業です。

---

 最後に、「ノーダルポイントがずれると何が起こるのか」についてもわかっていない人が多いようなので、簡単に書いておきます。

 まず、ノーダルポイントがAmmずれると、物体Bは-Ammずれて見えます。これは距離に関係ありません。

 もしくは、「ノーダルポイントを10mmずらすと、その世界では10mmの物体が勝手に消えたり発生したりする」とも言えます。その結果、画像のつなぎ目でボールペンが消えたり窓枠の太さが2倍になったりするわけです。その狂った10mmを撮影後に修正することは原理的に不可能です。

 次に、それが画像の中の何ピクセルに相当するかは「物体Bまでの距離」と「解像度」によって大きく変化します。例えば、物体Bまでの距離が2mで解像度が3000ピクセルキューブの場合、ノーダルポイントが1mmずれると物体Bの像は1.3ピクセルずれます。

 このことから、私の場合許容できるノーダルポイントのずれは1mm以内としています。ノーダルポイントが1mm以内で合っていれば、地面に落ちている砂粒まできれいにつながります。

>>冨士さん
詳しい説明をありがとうございました。
私もほぼ同じような測定をしているのですが、魚眼のノーダルポイントが動くということは、その測定の際の回転角度を実際に撮影する際の回転角度と同じにして測定した方がよいのですよね。
ただ、そうなると、上下前後左右撮影のように水平方向の回転角度と縦方向の回転角度が同じであればよいのですが、そうではない場合(水平5 or 6枚+上下のような場合)、水平方向でノーダルポイントを測定し合わせておいても、縦方向の回転の際にはズレているということになるのでしょうか。
その場合には、やはり縦横の回転角度の中間であわせて、若干精度を犠牲にせざるを得ないのでしょうか。

> 魚眼のノーダルポイントが動くということは、その測定の際の回転角度を実際に撮影する際の回転角度と同じにして測定した方がよいのですよね。

 「その方がよい」のではなく、「そうしなければ意味がない」のです。

 ただし、ノーダルポイント測定の際に回転させる角度は撮影の際に回転させる角度の「半分強」です。測定では「面の中心部と周辺部を比較する」のに対して、撮影では「面の中心部から隣の面の中心部まで回転させる」からです。例えば「上下左右前後法」では撮影時に90度回転させますが、測定時には50度回転させます。

> ただ、そうなると、上下前後左右撮影のように水平方向の回転角度と縦方向の回転角度が同じであればよいのですが、そうではない場合(水平5 or 6枚+上下のような場合)、水平方向でノーダルポイントを測定し合わせておいても、縦方向の回転の際にはズレているということになるのでしょうか。

 上にも書いてありますが、その通りです。

 つなぎ目の角度が全く変化しない撮影法は「前後」法だけです。この場合、回転角度が180度、つなぎ目の角度は90度になります。

 それ以外の撮影法では大なり小なりずれます。上にも書いてあるように「上下前後左右」法でも、各面の上下-左右方向に比べて斜め方向ではつなぎ目の角度が変化しているのです。それでも、各面を正方形にすればずれを最小に抑えることができ、実質的に視差はほとんど問題になりません。

 視差の問題を除いても、レンズの諸特性から面の形状が「長方形」や「変な形」になるのは避けるべきです。「水平5枚+上下」の場合、横の面は長方形、上の面は5角形になります。「-10度方向6枚+上」の場合、横の面は台形、上の面は6角形になります。

 私の感覚からすると、こんないびつな撮影法できれいにつながる方がおかしいです。


 「ノーダルポイント」に関する補足です。

 以下の「Panotools Group」の定義によると、そもそも視差が生じない点として「ノーダルポイント」という言葉を使うこと自体が間違いなんだそうです。
http://www.panotools.info/mediawiki/index.php?title=No-parallax_point

 つまり、「8mmレンズのノーダルポイントはどこか」と問われて第一主点の位置を教えてくれたSIGMAは何も間違っていないということです。パノラマという特殊な世界の人間が普通の世界の人間に誤解のないようにこれを伝えるには、具体的に「視差が生じない点(No Parallax Point = NPP)」と言うしかない、とここでは述べています。

 それから最後の方に魚眼レンズにはNPPがない、ということも書いてあります。権威のあるページに書いてあることですから、自分で真偽を判定できない人でも納得できるのではないでしょうか。
 

>>冨士さん
詳しい説明ありがとうございました。
自分の機材ではどうしても水平5枚以上必要なので、とりあえずもう少し精度を上げるよう研究してみます。

たいへん興味深く拝読しました。

SIGMA 8mm F3.5の「ノーダルポイント」を現在探っている最中ですが、どうも、シグマさんから提供された数値と当方のレンズでは合致しないようです。

上記のコメントを踏まえた上で、あれこれ試してみたいと思います。貴重なコメントに感謝!>各位

>冨士さん江
実は今回の一件で、ボク自身も改めて「ノーダルポイント」の定義について、考えることが出来ました。Rik Littlefield氏の論文「Theory of the “No-Parallax” Point in Panorama Photography」を初めて本気で訳しながら読みましたが、未だ100%判明してる訳ではありませんが、SIGMAが情報公開し、カメラ用語として通用している「NodalPoint」とは、実はパノラマ写真の撮影技術用語の中で使われる「NodalPoint」と異なるものだということが分かりました。少なくとも数値は全く違うものなんですね。
...となると、改めてこの論文の抄訳をしっかりと載せて、本ブログでNPPの得方をしっかりと再定義した方が良いと考えております。少しだけ期待して下さい。

というワケなので
>sokada、。さん江
数値が違うのも当たり前と言えばソノマンマです。ココまでエントリーしてなんですが、この企画、余り意味無かったみたいですね(苦笑)。
でも、だからこそ、この結果を受け、全てのレンズのNPPを得たくなりました。
本ブログのサイトメニューにある「nodal point」カテゴリーには、手動でNPPを得る方法を語っているサイトをたくさんご紹介しています。どうぞご参考迄。

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